BlenderでCycles(光の動きを計算して写真のような絵を作るレンダーエンジン)を使うと、F12を押してから1枚の画像ができるまで、なかなか終わらないことがあります。GPUのない古いPCやノートPCだと、なおさらです。
そこで、当ブログのPC(Celeron J4125)で、Blender 5.2 の同じ場面を設定だけ変えて10通りレンダーし、時間を実際に測りました。初期値のままだと約12分。設定を1つ変えるだけで56秒になり、見た目はほとんど変わりませんでした。
結論:いちばん効くのは「最大サンプル数を下げてデノイズ」

- 最大サンプル数を下げる(4096 → 64):732秒 → 56秒。いちばん効く。デノイズはオンのまま
- ノイズしきい値を上げる(0.01 → 0.1):サンプル数を触らずに65秒
- 解像度 % を下げる(100% → 50%):64サンプルで56秒 → 17秒。下書き向け
- 最大バウンス数を下げる(12 → 4):64サンプルで56秒 → 49秒。効き目は小さめ
逆に、デノイズを切るのは逆効果です。16サンプルでデノイズを切ると約11秒速くなりますが、画像が全体にザラザラになります。
測った条件
- PC:Intel Celeron J4125(4コア・2.0GHz)、メモリ8GB。GPUは内蔵の UHD Graphics 600 で、Cycles のGPUレンダーには使えないため、すべてCPUでレンダー
- Blender:5.2.2 LTS(Windows・zip版)
- 場面:床の上に、サル(細分化したもの)・金属の球・ガラスの球。照明は Blender に付属しているHDRI(周りの景色の画像)の interior
- 画像サイズ:640×360
設定名と初期値は、Blender 本体から読み出して確かめています。なお、測定はほかの作業もしながら行ったので、数秒〜数十秒の誤差があります(特に初期値のケース)。時間は目安として見てください。
Cyclesとは何か、なぜ重いのかという基本は、以前の記事「【Blender 2.8】レンダーエンジン Cyclesはツライよ」でも書いています。
初期値のCyclesは、なぜこんなに遅いのか
Blender 5.2 で Cycles を選んだときの、レンダー関係の初期値は次のとおりです。
- 最大サンプル数:4096(1つの画素につき、光の道すじを最大4096回計算する)
- ノイズしきい値:0.01(Adaptive Sampling がオン)
- デノイズ:オン
- 最大バウンス数:合計12(ディフューズ4・光沢4・伝播12・ボリューム0・透過8)
- コースティクス(反射・屈折):オン
- 時間制限:0(制限なし)
- 永続データ:オフ
サンプル数とは、ざっくり言うと「1つの画素の色を決めるために、何回計算して平均するか」です。多いほどノイズ(ザラザラ)が減りますが、そのぶん時間がかかります。初期値の4096は、かなり品質寄りの数字です。
ただし、毎回4096回すべて計算するわけではありません。Adaptive Sampling(日本語版でも英語のまま表示されます)がオンなので、ノイズが「ノイズしきい値」より小さくなった画素は早めに打ち切られます。それでも、当ブログのPCでは732.3秒(約12分)かかりました。
もう1つの注意点として、Blender 5.2 のレンダーエンジンの初期値は EEVEE です。Cycles で描きたいときは、レンダープロパティの「レンダーエンジン」で Cycles を選び直す必要があります。
設定ごとのレンダー時間(10通りを実測)
| 設定 | 時間 | メモ |
|---|---|---|
| 初期値のまま(最大4096・しきい値0.01・デノイズ) | 732.3秒 | 約12分 |
| 最大サンプル数 256 | 174.4秒 | 約3分 |
| 最大サンプル数 64 | 56.0秒 | 初期値の約13分の1 |
| 最大サンプル数 16 | 28.9秒 | デノイズあり |
| 16サンプル・デノイズなし | 17.6秒 | ザラザラ |
| ノイズしきい値 0.1(最大4096のまま) | 65.4秒 | サンプル数を触らない方法 |
| 64サンプル+最大バウンス数4・コースティクスなし | 48.7秒 | ディフューズ2・光沢2・伝播4 |
| 64サンプル・解像度 50% | 17.1秒 | 画像は320×180 |
| 時間制限 30秒(最大4096のまま) | 46.6秒 | 準備とデノイズの時間が上乗せ |
| 64サンプル・Adaptive Sampling オフ | 59.1秒 | オンより少し遅い |
表から分かることを整理すると、次のとおりです。
- 最大サンプル数がほぼすべてを決める:4096 → 256 → 64 → 16 と下げるほど、時間は大きく減る
- ノイズしきい値 0.1 も強い:最大4096のままでも65秒。サンプル数の目安が分からないときに便利
- 時間制限は「その秒数で終わる」わけではない:30秒にしても46.6秒かかった。サンプリング以外の準備と、最後のデノイズの時間が足される
- Adaptive Sampling はオンのままでよい:64サンプルで切ると、56.0秒 → 59.1秒と少し遅くなった
では、時間を13分の1にした画像は、どれくらい見た目が落ちるのでしょうか。

3枚とも、ブログに載せるくらいの大きさではほとんど見分けがつきません。ノイズしきい値0.1、バウンス数を下げたもの、時間制限、Adaptive Sampling オフの画像も同じでした。等倍で見比べて違いが出たのは、ガラスの球の中の映り込みと影のふちくらいです。
各設定の場所(日本語UIの名前)

どの設定も、画面右のプロパティにあります。日本語表示の Blender 5.2 での名前で書きます。
1. 最大サンプル数(いちばん効く)
レンダープロパティ → サンプリング → レンダーの中にある「最大サンプル数」です。初期値4096を、下書きなら16〜64にします。サンプリングにはビューポート(作業画面)のプレビュー用の設定も別にあるので、F12のレンダーに効く「レンダー」の側を変えます。
2. ノイズしきい値
同じ「レンダー」の中の「ノイズしきい値」です。値を大きくするほど「このくらいのノイズなら十分」と早めに打ち切ります。0.01 → 0.1 で、最大サンプル数4096のままでも65.4秒になりました。Adaptive Sampling のチェックがオンのときだけ働きます。
3. 時間制限
「時間制限」に秒数を入れると、その時間でサンプリングを打ち切ります。0は制限なしです。締め切りがあるときに便利ですが、前の章のとおり、準備とデノイズの時間は別にかかります。
4. デノイズ
「デノイズ」は、レンダーの最後にノイズを消す処理です。初期値でオンになっています。サンプル数を減らすときは、必ずオンのままにしておきます。
5. 最大バウンス数
レンダープロパティ → ライトパス → 最大バウンス数です。光が物に当たって跳ね返る回数の上限で、「合計」「ディフューズ」「光沢」「伝播」「ボリューム」「透過」に分かれています。今回は合計4(ディフューズ2・光沢2・伝播4)にし、同じライトパスの中の「コースティクス」(反射コースティクス・屈折コースティクス)も切りました。64サンプルで56.0秒 → 48.7秒。効き目は小さめです。ガラスや鏡が多い場面では、回数を減らしすぎると映り込みが変わることがあります。
6. 解像度 %
出力プロパティ → 寸法の「解像度 X」「解像度 Y」の下にある「%」の欄です。50%にすると縦横が半分になり、画素数は4分の1。64サンプルで56.0秒 → 17.1秒になりました。構図や色を確かめるだけの下書きなら、これで十分です。
デノイズなしの16サンプルと比べると
「デノイズの時間ももったいない」と思って切ると、どうなるでしょうか。違いが出やすいガラスの球のあたりを拡大して比べました。

- 16サンプル・デノイズなし(17.6秒):画像全体に細かい粒が出る。とても完成品には使えない
- 16サンプル・デノイズあり(28.9秒):粒は消える。拡大すると、ガラスの中の映り込みが少しぼやける
- 初期値(732.3秒):映り込みと影のふちがいちばんはっきりしている
デノイズにかかった時間は、この画像サイズで約11秒(28.9秒と17.6秒の差)。少ないサンプル数は、デノイズと組み合わせる前提で使うものだと分かります。
アニメーションなら「永続データ」も
アニメーションは、1枚の時間にフレーム数を掛けた時間がかかります。初期値の約12分を250フレームでレンダーすると、計算上は50時間ほど。だからこそ、まずはサンプル数を下げるのが先です。
そのうえで、レンダープロパティの「パフォーマンス」の中にある「永続データ」(初期値はオフ)をオンにする方法があります。フレームが変わるたびに場面のデータを一から準備し直さず、残しておいて使い回すための設定です。今回は静止画だけを測ったので、アニメーションでどのくらい速くなるかは確かめていません。場面によって差が大きいので、短い範囲で試してから使うのがおすすめです。
GPUが使えるPCなら、GPUに切り替える
Cycles のGPUレンダーに対応したグラフィックボードがあるなら、設定以前にGPUへ切り替えるのが効きます。
- メニューの「編集」→「プリファレンス」→「システム」を開く
- 「Cyclesレンダーデバイス」で、使っているGPUに合うもの(CUDA / OptiX / HIP / oneAPI / Metal)を選ぶ
- レンダープロパティの「デバイス」を「GPU演算」にする
なお、当ブログのPCは内蔵GPU(UHD Graphics 600)でCyclesのGPUレンダーに使えないため、GPUでの時間は試せていません。CPUとGPUを一緒に使う方法は「【Blender】レンダリングにCPU+GPUを使う」に、PC選びの目安は「Blenderに適したCPU オススメPCスペック」にまとめています(どちらも以前のバージョンの記事なので、画面は今と違うところがあります)。
おすすめの設定の組み合わせ

- 下書き・確認用:最大サンプル数16〜64+デノイズ。さらに解像度 % を50%に。当ブログのPCでは、64サンプル・50%で17.1秒
- 本番の静止画:64から始めて、ガラスの映り込みや影のふちが気になるときだけ256などに上げる。サンプル数を決めにくいなら、ノイズしきい値0.1にする方法もある
- アニメーション:1枚の時間×フレーム数で見積もってから、サンプル数を少なめ+デノイズに。永続データや最大バウンス数の調整も検討する
場面によって、ちょうどよいサンプル数は変わります。今回の場面では64で見た目の差がほぼなくなりましたが、ガラスや煙、暗い室内などノイズが出やすい場面では、もう少し多めが必要になることがあります。まず少ない数でレンダーしてみて、足りなければ1段ずつ上げるのが、いちばん時間をむだにしないやり方です。
まとめ
- Blender 5.2 の Cycles の初期値は最大サンプル数4096。当ブログのPC(Celeron J4125・CPU)で約12分かかった
- 最大サンプル数を64にしてデノイズを残すと56秒。見た目はほぼ同じ
- サンプル数を触らないならノイズしきい値0.1で65秒
- 下書きは解像度 % を50%に。64サンプルで17秒
- 最大バウンス数を下げる効果は小さめ(56秒 → 49秒)
- デノイズは切らない。16サンプルで切るとザラザラになる
- GPUが使えるなら、プリファレンスの「Cyclesレンダーデバイス」とレンダープロパティの「デバイス」でGPUに切り替える
※この記事の時間と画像は、Blender 5.2.2 LTS を当ブログのPC(Intel Celeron J4125・メモリ8GB・CPUレンダー)で実際に動かして測ったものです。PCや場面が違えば、時間は変わります。
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